埼玉県民のソウルフードであり、映画『翔んで埼玉』でも強烈なインパクトを残した「十万石まんじゅう」。埼玉県内では知らない人がいないほどの知名度を誇るこの銘菓には、実は奥深い歴史と、思わず誰かに話したくなる面白い裏話が隠されています。
今回は、十万石まんじゅうにまつわる驚きのトリビアを3つ厳選してご紹介します。
「うまい、うますぎる」の伝説的コピーを生んだのは天才版画家・棟方志功
十万石まんじゅうといえば、テレビCMでおなじみの「風が語りかけます。うまい、うますぎる」というキャッチコピーがあまりにも有名です。実はこの言葉、プロのコピーライターが考えたものではありません。
生みの親は、20世紀を代表する世界的版画家である棟方志功(むなかた しこう)先生です。
昭和20年代後半、十万石の初代社長が、当時すでに著名だった棟方先生に商品のパッケージ絵を依頼しました。その際、十万石まんじゅうを試食した棟方先生は、その美味しさに大感激。一気に5個も平らげ、その場で「うまい、うますぎる」と呟きながら、あの独特なタッチの姫君の絵(現在のパッケージ原画)を描き上げたと言われています。
まさに、本物の天才芸術家が本音で漏らした絶賛の言葉が、そのまま令和の今も愛される大ヒットコピーになったのです。
なぜ「饅」ではなく「幔」?漢字に込められた棟方先生の願い
十万石まんじゅうのパッケージや看板をよく見ると、一般的なお饅頭の漢字「饅頭」ではなく、「十万石幔頭」と書かれていることにお気づきでしょうか。食偏(しょくへん)ではなく、巾(はば)偏の「幔」という文字が使われています。
この漢字をあてたのも、実は棟方志功先生です。
「幔」という文字には、式典などで使われる長い幕(幔幕:まんまく)という意味があります。棟方先生は「このお菓子が、幔幕のように末永く、幅広く、多くの人々に長く愛される商品になってほしい」という願いを込めて、あえてこの漢字を提案しました。
単なるお菓子としての「饅頭」を超え、文化として長く息づいてほしいという、十万石と棟方先生の熱い想いがこの一文字に凝縮されています。
県内ではほぼ100%の認知度のCM、ナレーションは『一休さん』の新右衛門さん
埼玉県民であれば、テレビ埼玉(テレ玉)などで流れる「風が語りかけます……」のCMを一度は目にしたことがあるはずです。県内認知度ほぼ100%と言っても過言ではないこのCMですが、その「声」にも誰もが知る秘密があります。
印象的ながらもどこか渋く、説得力のあるあのナレーションを担当したのは、声優の野田圭一(のだ けいいち)氏です。
野田さんといえば、アニメ『一休さん』の蜷川新右衛門(にながわ しんえもん)役をはじめ、『グレートマジンガー』の剣鉄也役、『バビル2世』のロデム役、『サイボーグ009』の008(ピュンマ)役、さらには特撮『がんばれ!!ロボコン』のロボット学校の厳しくも温かいガンツ先生役など、数々の名作で重要なキャラクターを演じてきたレジェンド声優。
誰もが一度は耳にしたことがあるあの名優の落ち着いたトーンで「うまい、うますぎる」と語りかけられたからこそ、当時の埼玉県民の心に深く残り、何十年経っても色褪せない伝説のCMとなったのです。
野田氏の高名なキャリアが加わったことで、十万石まんじゅうのCMがどれほど豪華なキャスティングで作られていたかが読者にもより明確に伝わる内容になりました。
まとめ
映画『翔んで埼玉』で初めて知ったという方も、昔からおやつに食べていたという方も、こうした背景を知ると十万石まんじゅうがより味わい深く感じられるのではないでしょうか。埼玉が誇る「うますぎる」銘菓を、ぜひ歴史ロマンとともに堪能してみてください。
